いま、若者を中心に「蟹工船」がブームとなっています。作者・小林多喜二が1929年に書いたものです。今日の若者の新たな貧困と、「蟹工船」で描かれる労働者の苦難とその社会的背景、そして、それに立ち向かう人々の戦う姿に共感が広まっているのだと思います。
小林多喜二は、1931年10月、当時非合法であった日本共産党に入党します。
「蟹工船」と年代は違えども苦難に立ち向かう田中正也さんの姿がダブって見えます。田中さんの結婚式を思い浮かべました。書棚の奥から当時のパンフレットを引っ張りだしてみました。「二人の誓いのことば」を紹介します。いまでもあの感動がよみがえります。何でも「つらぬく」田中さんに期待しています。(T・I)
【二人の誓いのことば】
「(人類の)経験は、最大多数のひとを幸福にした人を、もっとも幸福な人としてほめたたえる」(カール・マルクス)わたしたちは、そんな生き方をしたいと強く思います。
大学受験に失敗し、生きがいをうばわれた仲間の苦しみを思い、教育をゆがめ人間性を否定する政府や権力にたいする怒りを訴えたとき、ともに立ちあがってくれた仲間。
働きがいをうばう女姓差別の現実から逃げだしたくなったとき、「わたしも同じように悩んでいるよ」と夜どおし語り合い、もっとみんなの思いをあつめて、女性がいきいき働けるような政治をつくろうと励ましあった仲間。
平和のため、働く仲間のために、自分の生活も犠牲にしてたたかってきた父や母、みんなの歓びや苦しみを自分のこととしてともにたたかってきた仲間たちのなかで、より多くの人の幸せのために生きることのすばらしさ、みんなの幸せのためにたたかうことが自分自身の幸せであることを学びました。
わたしたちは、そんな生き方を貫こうとするお互いの真剣な姿にひかれ、愛し合い結婚を決意しました。
わたしは、彼女が、仲間の思いに心を寄せ、その思いに懸命にこたえようとする誠実さをすばらしいと思い、大切にしてあげたいと思います。また、人間として、女牲として自立し、仲間から愛される人間として成長できるよう努カします。
わたしは、彼が、自分のことはあとまわしにしても、仲間のためならどこまでもがんばる姿が好きです。だから、それをささえる力になれるよう自分自身が成長したい。そして、わたし自身のがんばっている姿が彼のはげみになるように努力します。
わたしたちは、仲間や子供たちが、平和でみんなが主人公になる世の中をつくっていきます。そのためにも、二人の成長が、みんなを励まし、カを合わせられるよう、まわりの仲間の幸せのよりどころとなるような家庭を築いていきます。
1995年9月10日 田中正也・田中炎
【注】カール・マルクスードイツの経済学者、哲学者、革命家。20世紀において最も影響力があった思想家。1999年、イギリスのBBC放送が、視聴者に「過去1千年」で最も偉大な思想家は誰か」というアンケート調査で第一位に。